2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 11.擬態思想 短鎖ぺプチドに備わる「擬態思想」 短鎖ペプチドの本性は、先に述べたように、自律的に自分のかたちや化学的性質を変えながら対象物質に適応し、最も高い結合特異性で一体化する戦略をとるという稀有な性質をもっていた。私はこのように相手のかたちに合わせて自分のかたちを変えることを、“擬態思想”と呼ぶことにした。擬態思想とは他の物質の性質には全くなく、短鎖ペプチドだけがもつ特殊な性質を象徴的に表現した言葉であ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月8日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 14.疑似思想からみた抗体タンパク 結合特異性が高まる仕組み 次に、このような遺伝子の断片化思想で生成された抗体タンパクが、最初は対象抗原と低い特異性であるにもかかわらず次第に高い結合特異性を示すようになる理由を、先ほど述べた擬態思想の観点から考えてみたい。抗体タンパクは軽鎖と重鎖から構成され、抗原と結合する領域は可変領域、特にアミノ酸配列が著しく変化する三つの部位を超可変領域または相補性決定領域とよばれ、これらは抗原結合部位を形... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月8日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 15.モチーフ配列 ここで、もう一度短鎖ペプチドに立ち戻って考えてみよう。例えば、タンパク質が対象物質と結合する場合、生物種間でその結合部位のアミノ酸残基がほぼ同じで厳しく保存されている配列領域がある。この保存されたアミノ酸配列はモチーフ配列とよばれることもあるが、そのアミノ酸残基は数個から十数個というように、短鎖ペプチドと同じような長さになっている場合が圧倒的に多いことに注目したい。そして、これも短鎖ペプチドが機能... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 17.郷通子のモジュール説 ”生命の起源”とモジュール説 私の「タンパク質ワールド」仮説―「ペプチドの段階的合成説」に基づいて短鎖ペプチドが天然タンパク質の原型であるという発想のきっかけになったのは、郷通子のヘモグロビン分子構築に関するモジュール説であった。私が帯広畜産大学の助手だった頃、同校で取り組んでいた大豆の根粒の研究で、根粒を指でつぶすと出てくる赤い汁がヘモグロビンであることを初めて知り、植物にもヘモ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月9日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 22.二次構造の構築原理 折り畳みの観点から見たタンパク質の構造 ここからは、タンパク質の構造を折り畳みの観点から述べることにする。タンパク質構造の一般的な性質として、構造の表面は相対的に親水性アミノ酸が多く、水分子との接触環境になっており、内部は疎水性アミノ酸が多く、構造の安定化に寄与する疎水的環境になっているといわれている。ただし、主鎖そのものは親水性アミノ酸であっても、ペプチド単位では水素結合の供与基であるNHが、... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月9日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 28.シトクロムP-450 結合特異性を獲得する過程 ここではタンパク質の分子進化について、思いついたままに述べることにする。繰り返すが、短鎖ペプチドがある物質と結合する場合、最初は多数の結合特異性の低い短鎖ペプチドが結合するが、次第にこれらの中から親和力の高いものが選ばれ、数少ないものに収束していったと考えられる。しかし、この化学的な結合だけでは唯一の物質と結合するという最も高い結合特異性の獲得は困難であり、化学的に適合... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 42.アミノアシルtRNA合成酵素様複合体 短鎖ペプチドやその複合体は、本性として他の物質と化学的に結合したり、さらに物質の構造に自分のかたちを自律的に適応させて相補的に結合するという、稀有な擬態思想を持っていた。短鎖ペプチド鎖構成体が複製するなかで最も重要な基盤となるものは、特定のアミノ酸単体をそれぞれの短鎖ペプチド複合体に特異的に結合させる、アミノアシルtRNA合成酵素様複合体であると考えている。また、このような触媒性短鎖ペプチド複合... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 43.“青い惑星”をつくった短鎖ペプチド 第一部 総括~短鎖ペプチドの出現 ここでは、第1部で述べたことについて総括する。 私は、自然生成された短鎖ペプチドのすべてが複合体を形成するとは限らないと考えている。僅かな有効なペプチドだけが構成ブロックになり、複合体を構築する能力をもち、それらが離合集散を繰り返しながら、ペプチド同士が親和力と特異性をさらに高めながら会合し、安定な短鎖ペプチド複合体構造を構築する。さらに他の物質と結合す... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月23日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 1.これまでの総括とこれからの展望 第1部では、原始前生物環境でのタンパク性物質の出現と、それに伴う分子進化によって生命物質を含む有機物質の創生について述べた。この第2部は、それらの物質を基盤とした生命の誕生と生物進化について述べることにする。 生物進化を研究する方法 その前に、生物進化を研究する方法を考えてみたい。現在は化石や生物種間の遺伝子解析などを最大限駆使し、科学的な帰納的推理を展開した生物進化の方法論が成立している。しかし... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 2.短鎖ペプチド起源説 原始地球環境では、アミノ酸の直接熱重合によってミクロスフェアのような高分子のタンパク性物質が生成していたと考えられているが、アミノ酸が自然生成したのとは異なる原始地球環境下の海底の熱水噴火口で、短いペプチドが出現したことが有力視されている。私が考えたのは、この短鎖ペプチドが段階的な会合によって巨大化し、その過程で多様な機能を獲得し、天然タンパク質の原型が形成されることであった。しかもその場合、複... 続きを読むにほんブログ村