22.二次構造の構築原理

 折り畳みの観点から見たタンパク質の構造

ここからは、タンパク質の構造を折り畳みの観点から述べることにする。タンパク質構造の一般的な性質として、構造の表面は相対的に親水性アミノ酸が多く、水分子との接触環境になっており、内部は疎水性アミノ酸が多く、構造の安定化に寄与する疎水的環境になっているといわれている。ただし、主鎖そのものは親水性アミノ酸であっても、ペプチド単位では水素結合の供与基であるNHが、受容基であるCOが存在するため、疎水環境ではこの二つの極性基の間に水素結合がつくられ中和の状態にある。即ち、タンパク質の内部構造は疎水アミノ酸が多いことと、上述したように主鎖の極性基が水素結合で中和されることで疎水的環境になっており、この主鎖内の水素結合は堅固で安定な二次構造であるα-helixやβ-sheetの形成の要因ともなっている。このように主鎖は、ところどころで二次構造が生じ、折れ曲がり状態が固定されている。さらに主鎖を構成する各種アミノ酸残基のCαに結合する側鎖が異なる位置にある疎水性アミノ酸の側鎖と、疎水結合をはじめとするいろいろな非共有結合の協同的相互作用により、タンパク質は折り畳みという非常に複雑で不均一な構造形成を行っている。更に、一方、短鎖ペプチドが擬態思想をもっていると考えられるので、短鎖ペプチド構成体同士が、より複雑な結合特異性を示すと考えられ、タンパク質と同じように、短鎖ペプチド複合体は対称性を欠如した不規則で複雑な構造になることが予測される。

 短鎖ペプチドの複合体形成

擬態思想をもつ多数の短鎖ペプチド鎖構成体が、自由エネルギーの極小化則に従って会合と解離を繰り返しながら、より大きな複合体を形成していく過程は、対象の短鎖ペプチドと化学結合しながら、同時に遷移状態にある対象ペプチド鎖の構造と相補的にぴったりと結合するという難解なパズルのようで困難なことであることは先に述べたが、擬態思想をもつ短鎖ペプチドではさほど難しくなかったかもしれない。ある程度まで形成された複合体に特定の短鎖ペプチド構成体が結合する際に、ペプチド間の非共有結合が補強されるように二次構造や超二次構造(superfold)が形成され、より強固で安定化した複合体が形成されたと考えられる。この形成過程で、最初は複合体の構造内でペプチド結合のCαに結合する側鎖に立体的衝突が少なく自由度が大きかったものが、複合体が大きくなるに従い自由度が極端に制限されるようになり、さらに大きくなるとその複合体形成経路がただひとつという固有の立体構造になったのである。この過程は極小の自由エネルギー則で自律的に進行する、天然タンパク質の折り畳み機構を連想してもらえれば理解できるのではないかと考えている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です