2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 2.短鎖ペプチド起源説 原始地球環境では、アミノ酸の直接熱重合によってミクロスフェアのような高分子のタンパク性物質が生成していたと考えられているが、アミノ酸が自然生成したのとは異なる原始地球環境下の海底の熱水噴火口で、短いペプチドが出現したことが有力視されている。私が考えたのは、この短鎖ペプチドが段階的な会合によって巨大化し、その過程で多様な機能を獲得し、天然タンパク質の原型が形成されることであった。しかもその場合、複... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 3.タンパク質とはなにか ここでは、異なる角度からタンパク質とは何かを考えてみたい。 現在、生物は火力など特殊な環境を除いて、物理学的に化学的に過酷な極限環境でも、一部はそれに適応しながら生息している。生物が新たな環境に進出する場合の先遣隊が、生物にとって最も重要な物質であるタンパク質である。新しい環境に適応できるように、自ら遺伝子を操作してアミノ酸組成や構造を僅かに変化させながら対応しているのである。 例えば、常温... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 5.始原袋の構造 生命誕生における始原袋の役割 最初の始原袋がどのような膜構造であったかは定かではないが、少なくとも、半透膜の膜構造によって外部との直接の接触が制限され、外界の情報を膜を介して受け入れるという独自のはたらきをもっていたと考えられる。この膜構造は、一旦“原始スープ”の多様な物質を不均一に取り込み、次第に生命誕生に必要なものだけを袋の中に閉じ込め、必要でないものを膜から排除するという選択機能をも... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月18日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 6.細胞の原型としての始原袋(細胞の起源) 始原袋が担う運命的課題 開放系でつくられた“原始スープ”の中で、閉ざされた狭い半透膜の袋が無数に創生された。これら無数の袋が創生される際に、それぞれの袋内部に多様な物質が混在する“原始スープ”の一部が不均一に、狭い空間に閉じ込められ、この空間で物質間の衝突が繰り返され、ごく一部の袋の中で独自の化学反応が始まったと考えられる。このとき、半透膜の始原袋は“原始スープ”の低分子物質の出入りは可能で... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月18日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 12.高分子核酸の構造 RNAとDNAの構造 高分子核酸は塩基と糖とリン酸基で構成され、その構成糖がリボースであればリボ核酸(RNA)が、デオキシリボースではデオキシリボ核酸(DNA)がそれぞれ形成される。RNAはリボースとリン酸のホスホジエステル結合で骨格を形成し、塩基は糖と結合して分子内でところどころ相補的に結合することで、複雑で多様な構造になっている。中には触媒的機能をもつものも現れた。DNAは外側にデオキシ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年5月6日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 14.原始細胞での新規タンパク質の創生 新規タンパク質の創生 現在でも生物の進化の過程で、過去に全く存在しなかった新しい機能をもったタンパク質を創生することは、細胞にとって大きなイベントであることは間違いない。これまでに、細胞の新規タンパク質の創生には、一般に考えられている有力な説があるが、私はそれとは別の説もあるのではないかと思っているので、ここではそれについて述べたい。 細胞の新規タンパク質の創生について、従来から考... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 18.タンパク質の階層的分子進化と細胞の自動制御組織体 次に、細胞の自動制御組織体はどのような構築原理で組み立てられたかについて、私の考えについて述べたい。短鎖ペプチド複合体は、原始前生物環境の末期か始原袋が形成された初期のいずれかに、短鎖ペプチド複合体を構成する短鎖ペプチド構成体がペプチド結合で連結し、一本の長い鎖に進化した可能性については、先に述べたとおりである。また、タンパク質構造は短鎖ペプチドの集積体で、これがタンパク質の構造を複雑化している... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 19.原始細胞の進化と生命誕生 私は先に、原始前生物環境の始原袋に関し、不完全ではあるが原始的な物質代謝やエネルギー代謝の創生と、炭素源であるブドウ糖から生命物質が生産できる物質代謝ネットワークの存在の可能性を指摘した。ただし、その代謝過程では中間代謝物が異常に蓄積されたり欠乏したりするなど、不均一で無秩序な状態が生じやすかったため、それを修正し恒常的・安定的に一定の代謝物を維持できる、ロステリック効果や触媒性タンパク質のリン... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 20.複合構成体の組織化と断片化思想 本書ではこれまでに、「断片化思想」という言葉を何度か使ってきたが、ここで改めてその意味について述べることにする。 「断片化思想」の語源 第1部で取り上げた断片化思想では、始原袋から原始細胞の進化の過程で、物質・エネルギー代謝系と遺伝装置の創生、および細胞小器官や顆粒などの細胞複合構造体の構築に、これが深く関わってきたことについて述べた。この断片化思想は私の造語で、これを思いついたのは、抗体... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 21.分子進化の中立説 定説への疑問 タンパク質に関心をもつ立場として、分子進化の中立説について私の考えを一言述べてみたい。タンパク質の分子進化は、原始前生物環境で自然選択説に依拠して進行したと考えている。その後、異種間の生物でのタンパク質は、その分子系統樹をさかのぼっていくと、やがて構造や機能に必須なアミノ酸残基を含む祖先タンパク質にたどりつくといわれている。しかし、この祖先タンパク質が必須のアミノ酸残基をどの... 続きを読むにほんブログ村