2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月8日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 13.断片化思想 短鎖ペプチドの特異的結合能力 上述したように、短鎖ペプチドとその複合体が原始地球環境に存在するすべての有機物質とそれぞれ特異的に結合する能力を獲得する過程において、将来出現するであろう未知の有機物質への対処を想定し、事前に準備を整えておくという思想が芽生えたのではないか、と私は考えている。このような考えに至ったのは、動物細胞の免疫系における抗体タンパクの生成機構を知ってからである。免疫系では... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月8日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 14.疑似思想からみた抗体タンパク 結合特異性が高まる仕組み 次に、このような遺伝子の断片化思想で生成された抗体タンパクが、最初は対象抗原と低い特異性であるにもかかわらず次第に高い結合特異性を示すようになる理由を、先ほど述べた擬態思想の観点から考えてみたい。抗体タンパクは軽鎖と重鎖から構成され、抗原と結合する領域は可変領域、特にアミノ酸配列が著しく変化する三つの部位を超可変領域または相補性決定領域とよばれ、これらは抗原結合部位を形... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年5月5日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 8.物質の代謝経路のネットワーク 次に、原子袋が外界から取り込んだ担当であるブドウ糖から、生命の運営に必要な物質の代謝ネットワークがどのように創生したかを考えてみよう。 原始スープに浮遊したであろう連続反応系 原始前生物環境で新規の物質Aが特定の触媒性短鎖ペプチド複合体Xによって合成されたとすると、それに伴って物質Aが触媒性短鎖ペプチド複合体Yによって反応生成物質Bが生じる場合があるとすると、その物質Bが、さらに触媒性複合体Zに... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月18日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 9.原始袋における解糖系形成のもう一つの仮説 原始前生物環境の開放系で合成された物質を包み込みながら創生された半透膜の原始袋の中で、解糖系をいかに形成したかについて、少し余談を交えながら私のもう一つの仮説を述べてみたい。 現存する解糖系に関与する酵素タンパクの構造をみると、いずれも共通にβ-バーレル(barrel)構造をもち、その外側にさらにα-へリックス (helix)が取り囲むα/β-バーレル(barrel)の超二次構造になっているこ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 20.複合構成体の組織化と断片化思想 本書ではこれまでに、「断片化思想」という言葉を何度か使ってきたが、ここで改めてその意味について述べることにする。 「断片化思想」の語源 第1部で取り上げた断片化思想では、始原袋から原始細胞の進化の過程で、物質・エネルギー代謝系と遺伝装置の創生、および細胞小器官や顆粒などの細胞複合構造体の構築に、これが深く関わってきたことについて述べた。この断片化思想は私の造語で、これを思いついたのは、抗体... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 23.生命誕生の鍵を握る「タンパク質ワールド」仮説 タンパク質の起源 私は、タンパク性物質がRNAやDNAのような情報高分子よりもはるかに早く、この地球上に出現したと考えている一人である。その根拠は、分子進化で各種の物質がそれぞれ出現するには段階があること、合成が容易なものほど早く出現し、その後、その物質を基盤にして他の物質も巻き込みながら、徐々に複雑な物質が出現するという段階論を支持するからある。その原理を、生命の起源に大きな影響をあたえる... 続きを読むにほんブログ村