10.短鎖ペプチド複合体の形成
結合する相手はすべての有機物質が対象になるが、その中には他の短鎖ペプチドも当然含まれており、この場合に限って考えてみよう。二つの短鎖ペプチドが特異的に会合すると、短鎖ペプチドの複合体が形成されることになる。さらに、その複合体を中核にして、さらに別の短鎖ペプチドが会合し、その数を増やしていくと大きな複合体を形成すると考えられる。私は、その過程で複合体の内部構造の共有結合や非共有結合の再編が繰り返えされながら二次構造が形成され、更に独自の固有の複合体構造が構築され、それらが多様な機能を獲得しながら巨大な複合体になり、やがてタンパク質の原型となったのではないかと考えている。一方、短鎖ペプチドの異種物質との選択的結合は、多様な潜在的機能を獲得する基盤になると想定され、この場合、短鎖ペプチドが物質と単独で結合する場合よりも、複数のペプチドが会合する複合体の方が物質との親和力が増す場合もあり、相手の物質の種類によって対処する短鎖ペプチド側の形態も複雑に関係したと考えられる。
以上のように、短鎖ペプチドが他のペプチドと結合し複合体を形成することによって、原始的なタンパク様物質の多様性が決まり、一方、異種物質と結合する場合は、触媒作用などのような機能獲得の基盤となったと考えている。