12.短鎖ペプチドである必然性 

 短鎖ペプチド複合体が高い結合特異性をもつということは、その複合体が原則的に一つの物質のみと結合することを意味する。そうでなければ、高度の機能を維持することができないからである。それは、短鎖ペプチドとその複合体がすべての物質の種類や数だけ存在しなければならないことを意味する。地球上には膨大な種類の物質が存在するが、その物質に対応するために、それ以上の種類や数の短鎖ペプチドやその複合体を産出しなければならない必然性がある。この膨大な数の短鎖ペプチド複合体の形成に関し、私は次のような仮説を立てた。

短鎖ペプチド複合体

 原始地球の自然環境では、十数種類のアミノ酸が生成されたという。アミノ酸が二個から十数個の範囲で直鎖状にペプチド結合して生成される短鎖ペプチドの種類は、鎖の長さが異なることも加えて、それを順列組み合わせで計算すると非常に多数にのぼる。一方、このことは短鎖ペプチドが会合して複合体形成時にもあてはまると考えられる。仮に同じ短鎖ペプチドを単量体とすれば、この単量体を直鎖状に連結し短鎖ペプチド複合体を形成すれば、その単量体の数を増加すると、その数の分だけ複合体の種類は増加することになる。更に、その単量体をほかのペプチドに置き換えたり、またその会合順を換えたりすると、論理的にはその複合体の種類は急激に増加し、膨大な数の複合体が産出できると考えられる。

天然タンパク質の生産

 現存のタンパク質は20種類のアミノ酸が100個以上で構成されており、理論的に形成されるタンパク質の種類は天文学的な数にのぼるが、現実にはタンパク質が形成されない場合がほとんどである。しかし、そのような条件下においても、過去から現在にかけて全ての生物が必要としたタンパク質の種類は膨大であったにもかかわらず、必要な天然タンパク質を十分に生産することができたのである。では、将来新たに出現するであろう多くのタンパク質の生産も可能になるのであろうか。特に、将来に新たに出現する物質の中には、我々が人為的に試験管内でつくる人工物質も加わることを考えれば、必要なタンパク質はどのくらいの種類になるが予想もできない。しかし、先に述べたようにタンパク質は理論的には天文学的数字よりもはるかに超えた種類が生産される可能性があるので、この中で天然タンパク質が奇跡に近い僅かな確率でしか生産されないとしても、生産される種類は厖大であることは間違いない。従って、天然タンパク質の種類は過去と現在の多種多様な物質の出現に対処できた数よりもはるかに余裕があり、将来、機能ある天然タンパク質が必要になったとしてもすべて対処できると考えられる。

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