2020年3月14日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 1.「RNAワールド」仮説に対する疑念 「RNAワールド」仮説に対する疑念 「生命の起源」に関して私の「タンパク質ワールド」仮説を述べてみたい。これまでに「生命の起源」に関する諸説が数多く発表されてきているが、現在のその到達点はなんとなく「RNAワールド」仮説であるかのような印象を受ける。「RNA ワールド」仮説の発端になったのは、何と言っても1980年代のチェックらの研究によるRNAが生体触媒機能をもっているという衝撃的な発見であっ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月15日 / 最終更新日時 : 2020年4月7日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 4.原始地球環境での有機物、特にアミノ酸類の出現 「原子前生物環境」の定義 はじめに、本書に頻繁に登場する「原始前生物環境」という言葉は、大雑把に原始地球の自然環境条件下で有機物質が出現してから生命誕生に至る時間経過を意味するものである。地球誕生から原始前生物環境を経て生命誕生までの経過に要した時間は、数億から十数億年だといわれている。この原始前生物環境の初期に多様な有機物質がどのように生成されたかについては、ユリーとミラーの有名な原始地球の大気... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 41.鋳型的多短鎖ペプチド複合体の遺伝装置とDNA 原始前生物環境では、多くの短鎖ペプチド複合体が共同して短鎖ペプチド構成体を複製する能力を獲得することで、安定的に供給できる体制が確立したと考えられる。さらに“個別短鎖ペプチド複合体獲得装置(仮称)”を創生することにより、構成体から多種多様な機能をもつ個別的短鎖ペプチド複合体を、自律的に設計できるようになった。個別的ペプチド複合体の機能の中で触媒能力の獲得はとりわけ重要で、これによって原始地球の表... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月23日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 1.これまでの総括とこれからの展望 第1部では、原始前生物環境でのタンパク性物質の出現と、それに伴う分子進化によって生命物質を含む有機物質の創生について述べた。この第2部は、それらの物質を基盤とした生命の誕生と生物進化について述べることにする。 生物進化を研究する方法 その前に、生物進化を研究する方法を考えてみたい。現在は化石や生物種間の遺伝子解析などを最大限駆使し、科学的な帰納的推理を展開した生物進化の方法論が成立している。しかし... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 4.始原袋、原始細胞、現生細胞の創生 次に、生命誕生の場である細胞について話を進めることにする。細胞の進化として、私なりに始原袋、原始細胞、現生細胞と三つに分けてみたが、それは私独自の考え方によるもので明確な基準ではい。 私は、開放的な原始前生物環境の後期に、外界を遮断する無数の半透膜の袋が出現したと考えている。この袋状のものが生命誕生の場になるもので、この生命誕生に使われた袋内物質は、すべて原始前生物環境で創生された“原始スープ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月17日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 5.始原袋の構造 生命誕生における始原袋の役割 最初の始原袋がどのような膜構造であったかは定かではないが、少なくとも、半透膜の膜構造によって外部との直接の接触が制限され、外界の情報を膜を介して受け入れるという独自のはたらきをもっていたと考えられる。この膜構造は、一旦“原始スープ”の多様な物質を不均一に取り込み、次第に生命誕生に必要なものだけを袋の中に閉じ込め、必要でないものを膜から排除するという選択機能をも... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月18日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 6.細胞の原型としての始原袋(細胞の起源) 始原袋が担う運命的課題 開放系でつくられた“原始スープ”の中で、閉ざされた狭い半透膜の袋が無数に創生された。これら無数の袋が創生される際に、それぞれの袋内部に多様な物質が混在する“原始スープ”の一部が不均一に、狭い空間に閉じ込められ、この空間で物質間の衝突が繰り返され、ごく一部の袋の中で独自の化学反応が始まったと考えられる。このとき、半透膜の始原袋は“原始スープ”の低分子物質の出入りは可能で... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月18日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 7.始原袋内での物質代謝経路の創生の芽生え 生命誕生の場になった無数の閉ざされた狭い半透膜の袋が、原始前生物環境の“原始スープ”に存在していたタンパク性物質である短鎖ペプチド複合体とその他の雑多な物質を不均一に無作為に取り込むことにより、どのようにして生命活動の場に変貌したかについて考えてみよう。この袋が生命活動を起動するためにタンパク性物質が成し遂げたことは多方面にわたり、そのひとつが物質代謝と遺伝装置の進化だったことについては、先に述... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月18日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 11.原始細胞での新しい遺伝装置の創生―DNAの自己複製の原理の萌芽 生命誕生の最大のイベントの一つとして考えられるのが、原始前生物環境でつくられた多様な短鎖ペプチド複合体のようなタンパク性物質の遺伝情報が、原始袋を経て原始細胞にどのようにして伝達され、収納されたかである。さらに、原始前生物環境の後半になると遺伝情報が多量になり、多量の容量の遺伝情報を収納でき、これまでのものとは全く異なる遺伝装置を緊急につくる必要性が生じたと考えられる。結果として、遺伝情報の収... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月27日 / 最終更新日時 : 2020年4月19日 Hiroshi Masuda 第2部 生命の誕生へ 16.タンパク質の一斉変異の必然性 タンパク質の改変に関する定説への疑問 私は生物が過酷な環境へ進出する場合、ある特定の機能性タンパク質が改変すれば、新しい環境に適応できたとする考えに疑問を抱く。この考えでは、もしタンパク質の一つでもアミノ酸残基の変異が起こらないとか、適応が著しく遅れるようなことが生じた場合、生物自体がその環境で生存できなくなることも大いにあり得ると予想されるからである。それは生物の進化の上でも大きな支障と... 続きを読むにほんブログ村