23.モジュールとドメイン

 天然タンパク質の構成単位として、モジュールやドメインなどの概念について述べておきたい。両者には明確な区別はなく、ともに遺伝子のエキソンと対応する構造と機能の単位である。アミノ酸残基数に違いがあるようで、モジュールは20~40個ほどの残基で、ドメインは通常50~200個ほどから構成される。遺伝子の関与が全くない原始前生物環境期では、短鎖ペプチド複合体形成過程の各段階を示しているにすぎず、いずれも固有の機能をもった複合体であったと考えられる。現時点の天然タンパク質の構造研究は、より小さな固有の構造と機能をもっているモジュールレベルまでの分析にとどまっており、それよりもさらに小さな構造体レベルの分析はあまりないように思われる。ところで、私が考えている短鎖ペプチド複合体とは、最小の短鎖ペプチドが二分子のアミノ酸残基のものから巨大なタンパク質レベルのものまですべてを含んでおり、まことに大雑把なものである。その形成過程中にモジュールとドメインのレベルのものも含まれると考えている。

 以上、天然タンパク質と対比しながら、その原型である短鎖ペプチド複合体がどのような構造になっていたかの推測について述べてきた。以後も引き続き、短鎖ペプチド複合体の構造の予測について少々とりとめのない書き方になるが、思いつくままに述べてみたい。

 既存のタンパク質は不均一な構造体である。天然タンパク質は二次構造や超二次構造(super fold構造)が形成されると、それを基盤にしてより高い階層のモジュール、ドメイン、モルテングロビュールと呼ばれる構造形態を経て完成した三次構造としてのタンパク質が形成される。次にこのタンパク質をサブユニットとして、このサブユニット間の相互作用により四次構造が形成され、質的に異なるタンパク質の構造体が形成されるという具合に、次第に複雑な階層構造が形成される。
 

 天然タンパク質の構造における最近の研究

 私は天然タンパク質は短いペプチドの集積体だという考えに立つが、比較的最近の研究で、天然タンパク質は構造的に不均一であるが、安定な部分と不安定な部分が無作為に分布していることが明らかになってきた。それぞれの構造部分の長さを眺めてみると、いずれも短鎖ペプチドレベルよりも長いことが判明した。折り畳みはこの複雑な不均一な構造をなぞりながら進行するものと考えられる。しかし、そのような比較的大きいペプチド部分も、いくつかの同じような短鎖ペプチドレベルのものが結合して構成されているかもしれない。

 以上、タンパク質構造は多数の異なるペプチドレベルのものが相互に連結した集積体であるという知見は、タンパク質の「短鎖ペプチド起源説」が正しいことを示すことになると考えている。

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