疑似複製について(池原健二先生より)

本稿で、随所に引用させていただいている、タンパク質ワールドでは、既に先陣を切られております『GADV仮説 生命起源を問い直す』の著者、池原健二先生より、本稿「第1章 2.池原の[GADV]タンパク質の「疑似複製」仮説」へのご回答をいただきました。

・しかし、私にはこの[GADV]タンパク質仮説が基本的にタンパク質が生命誕生を推進した唯一の物質であることは納得できるとしても、若干の疑問点がないわけではない。私の疑問点を列記すると次のようになる。

一つめの疑問はこの疑似複製以外の、現存のリボソームが介在するタンパク質生合成のようなアミノ酸配列を正確に読み取るタンパク質の複製機構について、全く検討がなされていない点である。

――はい。私は生命誕生に向かう頃や生命が誕生した頃にはリボソームが存在しなかったと考えています。と言いますのも、当初は、[GADV]-アミノ酸の直接的重合によって[GADV]-タンパク質が形成され、次には、原始tRNA が、そして、原始 (GNC)n 遺伝子が形成されたこと、したがって、リボソームの形成はそれよりもずっと後になって行われたと考えているのです。

・二つめの疑問は、池原は加熱・蒸発・乾固の自然条件をモデルにした自らの実験でアミノ酸混合液から触媒機能のあるタンパク質を生成したが、果たしてそれが再現性があるものなのか。

――再現性があるものなのかについては、下の論文の中でも触れているのですが、もちろん、十分に再現性があると考えています。

Oba, T.; Fukushima, J.; Maruyama, M.; Iwamoto, R.; Ikehara, K. Catalytic Activities of [GADV]-Peptides: Formation and establishment of [GADV]-protein world for the emergence of life. Olig. Life Evol. Biosph., 2005, 35, 447-460.

・また、タンパク質の多様性はどのように形成されるのかということが不透明な点である。

――「タンパク質の多様性はどのように形成されるのか」という点ですが、私の考えているタンパク質の擬似複製は [GADV]-アミノ酸の直接的重合によって行われると考えています。そのため、合成されたど [GADV]-タンパク質も異なっています。即ち、多様性があるのです。

・さらに、疑似複製の過程に関与すると考えられるペプチドが他のペプチドと結合し複合体を形成し、それがタンパク様物質になる過程を推定しておきながら、その独自の生成過程に言及していない点にも疑問が残る。

――「それがタンパク様物質になる過程を推定しておきながら、その独自の生成過程に言及していない点にも疑問が残る」と書いておられる質問の内容が良く分からないのですが、私は、「[GADV]-ペプチドがランダムに集合し、[GADV]-タンパク質を形成する」ということで説明できているように思うのですが。

・私は、総じて疑似複製について、さらに自然生成されたペプチドと疑似複製との関係についての記述に曖昧な印象を受けた。また、何故、疑似複製を構成するアミノ酸を4種に限定したのかという疑問もある。

――この点については、私が最初の遺伝暗号がGNC であると気がついたことと関連があるのです。と言いますのも、 GNC がコードする4種のアミノ酸([GADV]-アミノ酸)なら、4種のアミノ酸をランダムにつないでも水溶性で球状のタンパク質を形成できるという擬似複製に注目したことがきっかけでした。このことが私のGADV仮説の出発点でもありました。ですので、私は4種の [GADV]-アミノ酸に限定することで(4種に限定した理由はもちろんあるのですが、ここでは長くなりますので省略させていただきます)擬似複製を思いついたことを私の最も重要な発見の一つだと考えています。したがって、最初のGNC遺伝暗号が確立されるまでは、4種の[GADV]-アミノ酸以外のアミノ酸も含まれる不完全なものでしかなかったのだと考えています。そして、GNC遺伝暗号が確立し、遺伝子が形成される過程でより完全な [GADV]-タンパク質になったのだと考えています。

(もちろん、これ以降は先生の本に書いておられる質問の答えとは全く別の事柄です)

以上、取り急ぎご質問に答えさせていただきました。その理由等についてはもっと詳しくお話しさせていただきたいところですが、それをメールで説明するのは困難なため、いつかお会いする機会がございましたら、直接お話しさせていただきたいと考えています。

池原 健二

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