2020年3月14日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 1.「RNAワールド」仮説に対する疑念 「RNAワールド」仮説に対する疑念 「生命の起源」に関して私の「タンパク質ワールド」仮説を述べてみたい。これまでに「生命の起源」に関する諸説が数多く発表されてきているが、現在のその到達点はなんとなく「RNAワールド」仮説であるかのような印象を受ける。「RNA ワールド」仮説の発端になったのは、何と言っても1980年代のチェックらの研究によるRNAが生体触媒機能をもっているという衝撃的な発見であっ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月14日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 2.池原の[GADV]タンパク質の「疑似複製」仮説 タンパク質」仮説によれば、そのヒントになったのは遺伝暗号の関連で、現存する生物の遺伝子のGC含量が大きく変化してもタンパク質構造があまり変化しないという事実から、GNC遺伝暗号でコードされる4種のアミノ酸であるGly, Ala, Asp, Valに注目したという。これらのアミノ酸はいずれも簡単な構造をもち、原始地球環境で自然生成されると見なされているものばかりである。さらに、この4種のアミノ酸が... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月15日 / 最終更新日時 : 2020年5月20日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 3.原始タンパク様物質の合成 「タンパク質ワールド」仮説を唱える立場から、まずは原始地球環境でタンパク質の創生についての概要を述べておきたい。原始タンパク様物質の合成には、大別すると「直接的高分子合成説」と「ペプチドの段階的合成説」の二通りが存在したと推定する。 原子タンパク様物質を創生する2つの合成説 「直接的高分子合成説」は、アミノ酸混合液を加熱重縮合反応することで直接ミクロスフェアのような高分子のタンパク様物質が一段階で... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月15日 / 最終更新日時 : 2020年4月7日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 4.原始地球環境での有機物、特にアミノ酸類の出現 「原子前生物環境」の定義 はじめに、本書に頻繁に登場する「原始前生物環境」という言葉は、大雑把に原始地球の自然環境条件下で有機物質が出現してから生命誕生に至る時間経過を意味するものである。地球誕生から原始前生物環境を経て生命誕生までの経過に要した時間は、数億から十数億年だといわれている。この原始前生物環境の初期に多様な有機物質がどのように生成されたかについては、ユリーとミラーの有名な原始地球の大気... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 11.擬態思想 短鎖ぺプチドに備わる「擬態思想」 短鎖ペプチドの本性は、先に述べたように、自律的に自分のかたちや化学的性質を変えながら対象物質に適応し、最も高い結合特異性で一体化する戦略をとるという稀有な性質をもっていた。私はこのように相手のかたちに合わせて自分のかたちを変えることを、“擬態思想”と呼ぶことにした。擬態思想とは他の物質の性質には全くなく、短鎖ペプチドだけがもつ特殊な性質を象徴的に表現した言葉であ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月8日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 15.モチーフ配列 ここで、もう一度短鎖ペプチドに立ち戻って考えてみよう。例えば、タンパク質が対象物質と結合する場合、生物種間でその結合部位のアミノ酸残基がほぼ同じで厳しく保存されている配列領域がある。この保存されたアミノ酸配列はモチーフ配列とよばれることもあるが、そのアミノ酸残基は数個から十数個というように、短鎖ペプチドと同じような長さになっている場合が圧倒的に多いことに注目したい。そして、これも短鎖ペプチドが機能... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年5月11日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 16.短鎖ペプチドの二段階分子進化 次に、短鎖ペプチドの分子進化は二段階にわたっているという私の考えについて、述べてみたい。短鎖ペプチド複合体の複製については後述するが、その際、自然は経済的観点から短鎖ペプチドを最小限の種類に制限する必要があったと考えている。そのため、同一のペプチドであっても、その遷移状態の複数の揺らぎ構造さえ利用してしまうほどの徹底ぶりが想像できる。 進化の過程 第一段階の短鎖ペプチド生成は、原始地球の自然環境... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月9日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 19.タンパク質の折り畳み機構 Anfinsenドグマには、「天然タンパク質の一次構造は高次構造形成をかなりの程度まで自律的に規定する情報をもっている」とある。このドグマに従えば、天然タンパク質であるかどうかは、可逆的に折り畳みがおきるかどうかを確認すればよいことになる。私がこの折り畳みの存在をはじめて知ったのは、Anfinsenらがノーベル化学賞を受賞した少し前頃であった。この不思議な現象について私なりに述べてみたい。 本題に... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月9日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 24.免疫グロブリン・スーパーファミリー 天然タンパク質構造は複雑系であるが、中には一部が共通した構造で構成されている一群のタンパク質がある。例えば、免疫グロブリンドメインには構造の一部が特徴的な二つのシステインが、数十個のアミノ酸をはさんでお互いに結合して生じる-S―S-ループ構造をもつ領域(免疫グロブリンドメイン)が存在する。このループドメインの数が異なることで、免疫に関係する受容体や接着分子など多様な分子が存在することになる。これ... 続きを読むにほんブログ村
2020年3月18日 / 最終更新日時 : 2020年4月9日 Hiroshi Masuda 第1部 原始無生物環境における化学進化 26.セクターの概念と閂のような基質特異性との関係 基質特異性 あるタンパク質が酵素であるか抗体であるか、または認識タンパク質であるかを決めるには、例えば酵素でいえば基質特異性を決定すればよい。もしこの基質特異性が崩壊してしまうと、その酵素の存在意義が全く失われ、それを失った酵素の遺伝子は変質して転写されなくなったり、機能をもつ産物をコードしない偽遺伝子となってしまう。言うならば、タンパク質に基質特異性という特殊な閂がかかると、酵素のアイデンティ... 続きを読むにほんブログ村