27.特定物質との接触で固有の構造をとるループ構造

 無秩序構造(ループ構造)

酵素タンパクの中には、基質がないときには変性状態の無秩序構造(disordered structure)で存在し、基質分子に接触すると折り畳みがおこり、固有の立体構造になるものが時々見出される。このような酵素が現在でも存在していることは、原始前生物環境では短鎖ペプチド複合体の中に、物質がないときは短鎖ペプチドから解離した状態で存在し、特定の物質と接触するとただちに固有の複合体に会合するという現象が頻繁におこっていたのではないかと考えられる。このような現象は、現存する酵素タンパクにもわずかながら残っていると思われる。一方、現存のタンパク質構造の一部に無秩序構造(ループ構造)が存在し、これが機能発現の重要な部分を担っている場合が実に多いことに気がつく。

例えば、抗体タンパクの可変領域の抗原結合部位のほとんどが抗原分子とぴったりあうように柔軟なループ構造になっていること、さらに、酵素タンパクの活性部位にループ構造が重要な触媒機能に関与している場合が多いことがあげられる。このことから、ループ構造は機能獲得の重要な要因であることは間違いない。察するに、原始前生物環境で短鎖ペプチドが対象物質と結合する場合、そのループ構造と結合することが頻繁にあったのではないかと推定できる。更に、このループ構造が安定して物質と結合するために、その両端を二次構造が結合する場合も考えられる。また、機能をもたない短鎖ペプチド複合体が、機能をもっている他の複合体のループ構造部分とカセットが交換することで機能を獲得した場合もあったのではないかと推察している。

 複合体である利便性

これは余談であるが、原始前生物環境で複合体が形成すると、会合しているペプチド構成体がペプチド結合でタンパク質のような長い一本の鎖へと分子進化をおこすとも考えられるが、私は、実はそうではなく短鎖ペプチド鎖複合体の状態が長く続いたのではないかと考えている。その理由として、短鎖ペプチド複合体が構造の構築や機能の獲得過程で、他の短鎖ペプチド構成体や複合体と交換や付加を行うにあたり、複合体のように構成体が会合している方がタンパク質のように一本の鎖に連結した状態よりも、円滑に行うことができたと思われるからである。従って、複合体である利便性は複雑な機能の獲得が容易に行えることで、タンパク質が一本の鎖に進化したのは、複合体が固有の機能を獲得した後の、生命誕生前後のことではないかと考えている。それはタンパク質のペプチド単位の交換・付加が遺伝子で容易に行われていることから、遺伝子がそれを継承していると考えている。

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